入院記録 -脾摘その他-
脾臓摘出目的
- 幼少期に摘出したはずの脾臓が少なくとも2個復活し,血液ポンプとしての心臓にかかる負荷が本来より高くなっている.脾摘することで心肺への負担を軽減できれば,肺高血圧症の状態を改善できる可能性がある.
- この数年,胃の静脈瘤・動脈瘤破裂頻度が上昇している.脾臓を摘出し消化管系を流れる全血液量を軽減することで側副血行路圧を低くし瘤の発生を抑えることを期待する.
1 脾臓摘出術
入院前日
PCR検査を受ける.駐車場の一角に設けられたスペースで, 時間帯によって一般・入院予定者・入院患者が分けられていた.
入院当日
術前説明
- 今回摘出する脾臓(脾腫)は2個.(術中,3個あることが発覚する)
- 幼少期の開腹痕を再利用する形で20cmほど開腹する.
- 幼少期に一度脾摘しているために本来の脾動脈がなく, 細かい欠陥が多数発達していることが予想される.
- 過去の脾摘から相当の年月が経過しているため,激しい癒着が想定される
- 通常,消化器官のこの規模の手術には硬膜外麻酔を施すが, 血小板の値が低く閾値すれすれのために不使用とする.
- 予定手術時間は7-8時間
一般向け参考資料 : 硬膜外麻酔
手術当日
朝8:30頃に病室を出て9:00頃開始.全身麻酔. 手術室で麻酔から覚醒した時に時刻を尋ねると15:50頃だったので,概ね予定手術時間通りに進んだようである.
ICUへ移動. Aライン,Vライン,CV,フローラン用CV(以前から留置されている), NGチューブ,その他心電図等が接続されている状態.
一般向け参考資料 :
ICUへは,機内モードの電子書籍の持ち込みすら禁止されたので,
そんな時のために用意していた紙本を持ち込んだ.
物を作って生きるには――23人のMaker Proが語る仕事と生活
手術翌日~
ICUから病棟の回復室へ移動.(昔は重症室樋=読んでいたが,気がついたら名称が変更になっていた) 食事再開.
さらに翌日に個室へ移動.しかし立ち上がると陰嚢に激痛が走る. お通じもない.
手術の説明を受ける.
- 成人男性の拳大の脾腫が2つ,黒豆大の脾腫が一つあり,合計3個の脾摘を行った. 幼少期から通算すると4個脾摘したことになる.
- 案の定,大量に細いし血管があったため,時間の大部分はその血管の処理に費やした.
- 小腸の癒着もあったのですべて剥がした(結果的にこれが原因で苦しむこととなる)
2 鼠径ヘルニア手術
症状
前述したように,術後から立位あるいは歩行をすると睾丸に激痛が走る. 術後2,3日語からはベッド上で仰臥位でも終始激痛が走るようになり, 脾摘よりもこちらの方がずっと苦しかった. 歩行に支障が出るほどだったので医師に報告し超音波をしたところ, 鼠径部から小腸が脱腸し陰嚢に入り込んでいた. 完全な嵌頓状態で水も溜まっており, 幸い鼠径が大きくすぐに腸が壊死することはないにしても 腸閉塞を起こしているためすぐに手術をすることとなった. 月曜に脾摘手術を行い,その週の金曜日であるから怒涛な一週間である.
処置内容・手術当日
- 処置方法 ... メッシュプラグ法
- 処置時間 ... 所要時間は数時間であった.
術後は再びICUへ.この時に,前述した書籍の残り半分を読了する. 翌日,開腹室を経て一般病室へと移動した.
なお,ヘルニア傾向自体は幼少期からあったが, これまでは腸が癒着していたことでこれまで嵌頓を引き起こす状態にまでなることはなかった.
術後
術後は痛みもなくなりお通じも回復した. ただ,癒着が剥がされ自由に動けるようになったものの, 鼠径を封じられ行き場を失った腸が蠕動痛を数日に一度引き起こし, 何度かソセゴンのお世話になった.
脾臓摘出後の経過も問題なく食事も再開できたため,9月中旬に退院した. 開腹した手術部のスキン・ステープラは退院前日に半抜鉤し,退院当日の朝に全抜鉤した.
参考資料 : スキン・ステープラ
退院後
退院当日夜お風呂に入った痕,開腹部を保護するテープを張り替えると, 全長およそ20cmの開腹痕のうち10cm弱の傷口から黄色い膿のようなものが出てきており, 傷口がパックリ開いているように見えた. 病棟に電話したところ,翌日も治らなければその次の日に外来に来るように言われる.
翌日も治らなかったので退院してから二日後,外来に行くことに. ところが家を出る直前,血便が出る. 術後の痛みを抑えるために飲んでいたロキソニンによる潰瘍だと思われるが 外来であわせて相談することにする.
外来で開腹部を診てもらい,テープを張り替え様子をみることになった. 消化管出血に関しては,外来到着時点で軽い吐き気を覚えるくらいに悪化していたので Vラインを取りNGチュープ経由で胃にたまった出血を吸引してもらう. そのまま開腹室へ入院.
3 胃静脈瘤治療
開腹室で,牛乳に溶かしたトロンビン止血剤をNGチューブ経由で投与される. 入院した翌日,再びPCR検査を受けさせられる. 退院期間わずか1日とはいえPCR検査を受けなければいけないようである.
入院したのが4連休直前だったために内視鏡検査は翌週へ持ち越される. トロンビンが効いたのか日曜にはほぼNGチューブから回収される血も0になっていたため, 連休がために暇な絶食期間を強いられることとなる.
第一回内視鏡(観察)
胃壁から間欠的に血が出血していた. 内視鏡写真を見せてもらったが,間欠泉のイメージがまさにぴったりである. 最初はなんともないように見えたが,観察を続けるうちにピューっと勢いよく出血することを繰り返していた.
CT検査
通常はカテーテルで出血箇所の近くの血管までアクセスし出血している血管を潰す処置を施す. その処置に使える欠陥があるかどうかをCTで調べた.
参考資料:ヒストアクリル硬化療法
結論として,そのような欠陥はなかった. 門脈もない,脾臓もない,側副血行路多数の特殊な環境でそのような太い血管はなかなかないようである. そのため,内視鏡で胃にアクセスし瞬間接着剤のようなもので出血を止める硬化療法が取られることとなった. 消化器内科に硬化療法器材がなかったため道具を揃え後日改めて取り組むことに.
第二回内視鏡(処置)
第一回内視鏡から二日後に実施.1,2時間程度で完了したようである. 処置は問題なく完了したとのことだが,別の血管に圧がかかって出血する可能性もあるため, 後日再観察するまでは絶食になった.また無為に土日を過ごすこととなった.
第三回内視鏡(観察)
観察だけなので3,40分で完了した. 新たな出血は認められず,観察上問題ないことが確認できた. 2日ほど病院食で様子を診た後,週末に退院となった.
なお,第三回内視鏡の前日には,脾摘手術の肺高血圧症における効果を確かめるために心カテ検査も実施した.
参考資料:肺高血圧症評価項目例
退院
8月末入院-10月初旬退院と,およそ6週間も入院することとなった. 本来,脾臓摘出手術だけであれば10-14daysと言われていたが, 次から次へと問題が発生し,数ある入院生活の中でも非常にストレスフルなものの一つとなった.